エヌビディアは循環取引?エヌビディアが循環取引と言われる理由とは?

エヌビディアは循環取引?
エヌビディア(NVIDIA)は、AI(人工知能)やGPU(グラフィック処理装置)の分野で世界をリードする米国企業です。特にChatGPTをはじめとした生成AIブームによって、同社のGPUは事実上の必須インフラとなり、その株価は過去数年で爆発的に上昇しました。時価総額は一時的にアップルやマイクロソフトを超える水準にまで達し、まさに「AIバブルの象徴」と言える存在です。
しかし、この急激な成長に対して「エヌビディアは循環取引をしているのではないか?」という疑念が一部の投資家やアナリストから出ています。循環取引(ラウンドトリッピング)とは、企業同士が取引をぐるぐる回すことで、実際には新しい付加価値を生んでいないにもかかわらず、売上や需要が大きく見えるようにする手法を指します。
たとえば以下のようなケースが疑われます。
- エヌビディアがAI企業(例:オープンAI)に対してGPUを販売
- そのAI企業がGPUを活用してサービスを提供し、収益を得る
- その収益の一部はクラウドベンダー(例:マイクロソフトやオラクル)に支払われる
- そのクラウドベンダーもエヌビディアのGPUを大量に購入
- ぐるぐる回る構造で、エヌビディアの売上が膨らんでいく
このような循環的な構造がもし存在するのであれば、実際には需要の一部が「AIブームによる期待先行」に過ぎず、持続性に疑問が出てきます。そのため「循環取引の疑い」が浮上しているのです。
エヌビディアが循環取引と言われる理由とは?
それでは、なぜエヌビディアが「循環取引」と言われるのでしょうか。背景にはいくつかの理由があります。
1. GPU需要の爆発的増加が不自然に見える
エヌビディアの売上は、生成AIブーム以降に急激に伸びました。特にデータセンター向けGPUの需要は前年比200〜300%増と異常な伸びを示しています。これほど急速な需要増加は過去のIT産業でもあまり例がなく、「本当に持続可能なのか?」という疑念が生じています。
2. 顧客と投資先が重複している
エヌビディアは単なるGPUベンダーではなく、AIスタートアップやクラウド企業に対しても投資を行っています。つまり、エヌビディアが出資した企業がエヌビディア製GPUを購入するという構造です。これが「自作自演的な売上増」に見えることから「循環取引的ではないか」と批判されるのです。
3. 生成AIサービスの収益モデルが未成熟
ChatGPTやその他の生成AIは注目度が高い一方で、収益化モデルはまだ確立されていません。多額の資金が投じられているものの、その投資がどこまで持続するのかは不透明です。つまり、今は「GPU需要が先行」しているだけで、実際には循環的な資金の流れによってエヌビディアの売上が過剰に膨らんでいる可能性があるのです。
4. ITバブルの記憶
2000年代初頭のITバブルでも、ソフトウェア企業や通信企業が循環取引を通じて売上を膨らませていた事例がありました。投資家の一部は、現在のエヌビディアやAIブームに「当時と同じ匂いがする」と感じており、それが「循環取引」という言葉で語られる背景となっています。
AIバブルは循環取引の発覚で弾ける?
現在のAIブームは「第3次AIブーム」と呼ばれるほどの盛り上がりを見せています。しかし、もし循環取引的な構造が明らかになれば、このバブルが一気に弾けるリスクがあります。
1. AI投資は持続可能か?
AI関連の企業は現在、多額の投資を集めています。特にGPU購入は数十億ドル規模にのぼることもあります。しかし、これらの企業が短期的に利益を生み出せるわけではありません。つまり「投資マネーが尽きればGPU需要も急減する」のです。これは循環取引的な構造が破綻することを意味します。
2. AIブームの期待と現実の乖離
ChatGPTなどの生成AIは確かに革新的ですが、企業の収益をすぐに押し上げるわけではありません。むしろ運営コスト(特にGPUの稼働コスト)が大きく、黒字化は難しい状況です。投資家が「AIは儲からない」と認識した瞬間、循環取引的に見えていた需要が一気に縮小し、AIバブルが崩壊する可能性が高いのです。
3. 規制や監査の強化
もし米国証券取引委員会(SEC)などの当局が「循環取引的な会計」を問題視すれば、AI関連企業やエヌビディアの会計処理に監査が入る可能性もあります。その場合、需要の実態が可視化され、「バブルが剥がれる」展開になることも考えられます。
このように、AIバブルは「循環取引疑惑」と密接に関係しており、バブルの持続性に対する最大の不安要素になっています。
オラクル、エヌビディア、オープンAIは循環取引的?
エヌビディアだけでなく、オラクルやオープンAIとの関係性にも「循環取引的ではないか」との指摘があります。
エヌビディアとオープンAI
- オープンAIはChatGPTを運営する企業であり、膨大なGPUを必要としています。
- そのGPUの多くを供給しているのがエヌビディアです。
- 同時に、エヌビディアはAI企業への投資を通じてオープンAIのエコシステムに関与しています。
つまり、エヌビディア→GPU供給→オープンAI→AIブーム加速→エヌビディアの需要増、という循環構造が成立しているのです。
エヌビディアとオラクル
- オラクルはクラウドサービスを展開しており、AI向けのインフラとしてGPUを大量に導入しています。
- 一方で、オラクルはAI企業との提携も進めており、その需要を通じてエヌビディアのGPU販売がさらに増加。
つまり、クラウド企業とAI企業を介して、エヌビディアの売上が二重三重に増幅されているのです。
循環取引的な疑念
もちろん、これらは違法な循環取引(会計不正)ではなく、実際の需要に基づいた取引です。ただし、需要の一部は投資マネーによって人工的に膨らまされている可能性があるため「循環取引的だ」と言われるのです。
要するに、「エヌビディア→AI企業→クラウド企業→再びエヌビディア」というサイクルが、AIバブルを支えている大きな要因だというわけです。
まとめ:エヌビディアは循環取引的?AIバブルは崩壊するのか?
エヌビディアが「循環取引」と言われる理由は、
- GPU需要が急増していること
- 顧客と投資先が重複していること
- AI企業やクラウド企業との取引が循環的に見えること
にあります。
実際には違法な会計不正をしているわけではありませんが、投資マネーによって需要が増幅されている構造は「循環取引的」と表現できます。そのため、AIバブルの持続性に疑問が生じているのです。
特にオラクル、オープンAI、マイクロソフトなどとの関係は、エヌビディアの売上を押し上げる一方で「もし投資が冷え込めば一気に逆回転する」というリスクを孕んでいます。
今後、AIバブルが持続的な産業成長につながるのか、それとも循環取引的な構造が崩壊してバブルが弾けるのか。エヌビディアの動向は、世界経済の先行きを占う重要なカギを握っているといえるでしょう。