職場ではちゃん付けはハラスメント?職場では極論名字だけで呼ぶのが無難
近年、職場におけるコミュニケーションのあり方が大きく見直されています。その中で注目を集めているのが「ちゃん付け問題」です。
「〇〇ちゃん」と呼ぶことは、一見フレンドリーで親しみやすく感じられるものの、職場という公的な空間ではハラスメント(パワハラ・セクハラ)に該当する可能性があるとして、トラブルの原因になるケースも増えています。
本記事では、
- 職場での「ちゃん付け」は本当にハラスメントに当たるのか?
- 実際に賠償請求につながったケースはあるのか?
- ビジネスシーンでの適切な呼び方とは何か?
を中心に、ハラスメントの観点と社会常識の両面から詳しく解説します。
職場ではちゃん付けはハラスメント?
まず、「職場でのちゃん付け」はなぜ問題視されるようになったのでしょうか?
結論から言うと、相手が不快に感じた場合、ハラスメント(特にセクハラ・パワハラ)と見なされる可能性があります。
「ちゃん付け」はもともと親しい間柄や、子ども・後輩・部下など“自分より立場が下”とされる人に対して使われることが多い呼称です。そのため、職場の上下関係がある中で上司が部下に対して使うと、「見下されている」「子ども扱いされている」という印象を与えることがあります。
特に、女性社員に対して「〇〇ちゃん」と呼ぶケースは、性別による差別的な言葉遣いとしてセクハラと判断される可能性が高いです。
厚生労働省が定める「職場のハラスメント指針」では、以下のような行為もセクハラ・パワハラに該当し得ると明記されています。
「相手の人格を無視し、尊厳を傷つける言動」「性的な意味を持つ言葉や態度」
「ちゃん付け」は直接的な性的発言ではないものの、「女性社員だけ」「若手社員だけ」など特定の層にのみ使う場合は、明確な差別的扱いと見なされることがあります。
たとえば、同じチームの男性社員を「田中さん」、女性社員だけ「美香ちゃん」と呼ぶような状況では、組織内での立場の不平等を助長し、無意識の差別を生む温床になります。
職場ではちゃん付けはハラスメントで賠償?
「ちゃん付け」が原因で訴訟や賠償に発展するケースはあるのか?
実際、近年では職場の呼び方が原因で損害賠償を命じられた事例も報告されています。
たとえば、上司が特定の女性社員を継続的に「〇〇ちゃん」と呼び続け、他の社員の前でも同様の発言を繰り返した結果、「人格を軽視された」「女性として侮辱された」として、被害を訴えたケースがあります。
この場合、裁判所がセクハラとして認定し、会社側に慰謝料の支払いを命じた例もあるのです。
もちろん、「ちゃん付け」という言葉そのものが違法というわけではありません。
問題は、呼び方の意図と受け手の感じ方にあります。
- 「親しみを込めて」呼んでいたつもりでも、相手が嫌だと感じればハラスメント。
- 「職場で他の人が見ている前で」繰り返すと、屈辱的な環境を作り出す。
- 「男女で呼び方を変える」と、性差別的な扱いと判断される。
つまり、加害意識がなくても、相手の尊厳を傷つける可能性がある行為はハラスメントになり得るということです。
さらに、労働裁判や社内調査で不利になるのは「言った側」ではなく、「不快に感じた側の主観」が重視される点も重要です。
企業としても、コンプライアンス遵守の観点から社員教育を進める動きが広まっています。
最近では、企業のハラスメント防止研修でも「職場での呼称の扱い」が明確に取り上げられるようになりました。
たとえ冗談や親しみのつもりでも、相手の同意がなければ**「業務上の地位を利用した不当な言動」**とされるリスクがあるのです。
職場ではちゃん付けはしない方が良い
こうした流れを踏まえると、職場で「ちゃん付け」を使うのは避けた方が賢明といえます。
特に以下のような状況では、トラブルに発展するリスクが高いです。
- 上司や先輩が部下に使う場合
- 異性間で使う場合
- 公の場(会議、朝礼など)で使う場合
- 一部の社員だけに使っている場合
もし、長年の慣習やチームの雰囲気で「ちゃん付け」が定着している場合でも、全員に確認を取るか、徐々に廃止する方向にシフトすることをおすすめします。
また、社員同士で親しい関係を築いている場合でも、仕事中やビジネス上の場面では“公的な呼称”に切り替えるのが基本マナーです。
たとえば、普段は「さゆちゃん」と呼んでいても、会議中は「佐藤さん」と呼ぶ。
これだけでも、組織としての信頼感や職場の品格を大きく保つことができます。
呼称の使い分けをすることで、公私の境界線をしっかり引くことができるため、トラブル防止にもつながります。
職場では極論名字だけで呼ぶのが無難
では、最も無難でトラブルを避けられる呼び方は何でしょうか?
結論としては、名字(苗字)+「さん」付けが最も安全で適切です。
「〇〇さん」という呼称は、性別・年齢・役職を問わず使える中立的な表現です。
上下関係を意識せずに使えるため、社内の公平性を保ち、誤解や不快感を与えにくいというメリットがあります。
最近では、フラットな組織文化を重視する企業や外資系企業でも、「ファーストネーム+さん」や「名字+さん」で統一するルールを設けているところが増えています。
一方で、役職呼称(例:部長、課長、主任など)は組織文化によっては形式的すぎる場合もあるため、**部署の文化に合わせて「さん付け」で統一」**するのが現代的なスタイルです。
また、「あだ名」「ちゃん」「くん」「ニックネーム」などは、社内外の人が同席する会議やメール、チャットなどの公的な場では避けるべきです。
職場は「フラットでありながらも、互いの尊厳を保つ場所」。
親しみやすさよりも、リスペクトを重視した呼称の使い方が求められています。
まとめ:職場の呼び方は“親しさ”より“敬意”を
この記事で紹介したように、「ちゃん付け」は親しみを込めた表現ではありますが、職場という公的な環境ではハラスメントの引き金になりかねないリスクがあります。
特に、上司や年上の社員が部下や女性社員に対して使う場合は、本人に悪意がなくても「軽んじられている」「性的に見られている」と誤解される可能性があり、セクハラ・パワハラとして問題視されるケースが増えています。
また、訴訟や社内処分、賠償に発展した事例も存在しており、企業としてもコンプライアンスの観点から厳しく対処する時代になっています。
したがって、最も安全で信頼を損なわない呼び方は、やはり**「名字+さん」**。
極論を言えば、「名字で呼ぶのが無難」ということです。
呼称の使い方ひとつで、職場の雰囲気や信頼関係は大きく変わります。
ビジネスにおいては、親しさよりも「相手への敬意」を表す言葉遣いが何より重要です。
✅ まとめポイント
- 「ちゃん付け」は相手が不快に思えばハラスメント。
- 性別・立場による使い分けはセクハラ・パワハラと見なされることも。
- 賠償や訴訟に発展した例もある。
- 職場では「名字+さん」で統一が最も無難。
- 呼称は“親しさ”よりも“敬意”を意識すること。
